雑食動物のジレンマ2010年11月09日 16時10分

 『雑食動物のジレンマ』
 マイケル・ポーラン/東洋経済新報社

ひさびさに本のご紹介。

アメリカでベストセラーになったノンフィクション。
雑食動物のジレンマ、雑食性を手に入れたために人間はどんな環境の場所でも生きられるようになった。しかし、食べられる物と食べられない物、体に良いもの悪いもの、それらを自ら考えて選ばなければならなくなった。
摂食障害が蔓延するアメリカの3つの食。工業的な大量生産の食、オーガニックの食、原始的な狩猟採種の食、それぞれを食べ物が生産される出発点から食卓に上るまでを追ったドキュメンタリー。
第一部の工業的な食の章では、農家への直接支払いによって、アメリカの農業がどう変わっていったか。生産コストより安い値で売買されるトウモロコシがアメリカの食を支えている現実。イメージとはかけ離れたアメリカ牛の生産現場などが描かれとても興味深い。
第二部、オーガニックの章では、工業的大量生産のオーガニック産業と自給的なオーガニックの対比。そして日本とはずいぶん違う食肉文化圏での有機畜産の姿が面白かった。
第三部は菜食主義の考察、作者がキノコ狩りやワイルドピッグのハンティングで食料を調達する様、それらを調理する様の奮闘ぶりが面白い。

食品が工業的に大量生産される時に掛かる見えないコストは、食品の価格には反映されないが、消費者がどこかで気づかずに確実に払っている。ファストフードはスローフードより本当に安いのか。
文化が作り上げた食の習慣やルールが雑食動物のジレンマを防いでいた。
文化の力が弱くなるほど食欲は暴走する。
文化の浅いアメリカの食の話だけれども、日本にも当てはまる部分があって、なかなか興味深い本でした。

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